- TOP >
- 事業とリーダーシップ >
- Inspiart事業 >
- インタビュー - CSO 九頭龍 雄一郎
九頭龍 雄一郎 Yuichiro Kuzuryu
国内大手楽器メーカーからシリコンバレーの音楽系ベンチャーへ、さらに帰国後介護関連デバイスを開発するベンチャーに参加。2018年EYS-STYLE(現2nd Community)の取締役CSO / Inspiart事業本部長就任。
同時期に株式会社クレイテックを起業し、製品企画からハードウェア/ソフトウェア開発、生産まで全プロセスを手がけてきた経験を強みに、新規事業開発などのコンサルティングをおこなう。
「まだ世の中にない技術を生み出す」
複数のベンチャーで技術開発の陣頭指揮を執ってきたエンジニアが描く、
Inspiart事業の“目指すべき未来”
EYS-STYLE(現2nd Community / 以下、EYS)のCSO(Chief Strategy Officer、最高戦略責任者)であり、Inspiart事業本部長である九頭龍 雄一郎氏は、ハードウェアエンジニアとしてシリコンバレーや日本で数々のスタートアップ企業に参加し、技術開発を手がけ、製品化へと導いてきた。その九頭龍氏が、次なるチャレンジの場として選んだのがInspiart事業だった。ここで目指すのは「世の中に比肩するものがないような高い技術を生み出すこと」、そして「社会に必要とされる技術を生み出すこと」。Inspiart事業が目指す未来を語った。
「それ、やりたい?」と自らに問い続ける
国内大手楽器メーカーからシリコンバレーのスタートアップへ。その後も、世の中で注目を集めるスタートアップに次々参加してきた九頭龍氏。「私はテクノロジーから入って、経営サイドにもうつった人間ですが、相変わらずエンジニアリングも続けています。いまだに回路図も引きますし、コーディングもしますよ」と話す。生粋のエンジニアなのだろう。
そんな同氏がInspiart事業への参加を決めたのは、やはり音楽だという。「私自身もベースを弾いていて、ステージに立つ喜びを知っています。それは、たぶん一生変わらない、自分にとって原点のようなもの。EYSはこういった楽しさや喜びを世に広めていく会社なので、その魅力は大きいです」また、経営者に対する興味も大きな理由だ。「新規事業の立ち上げは大変なことが多く、それでも前に進めるかどうかは本当に“人”次第。その人とやることが楽しいとか、その人が話すことが魅力的とか、そういったことがないと結局続きません。ビジネスを成功させる方法はひとつではなくて、当然、企業によって採用する戦略は異なります。でもそのなかで『自分はそれをやりたいか?楽しいと思うか?』という感覚を大切にしています。自分が興味を持って、本当にこれが人を幸せにすると思える領域を、一緒にいると楽しいと思える人とやりたい。これに尽きます」そしてEYSはその条件を満たしていた、というわけだ。
社会に必要とされる技術を生み出す
Inspiart事業の責任者となった九頭龍氏が最初に決断したのが、事業の方向性である。EYSがこれまで手がけてきた音楽教室事業と世界中の音楽をつなぐInspiart事業………となれば当然、いかに両事業の整合性をとり1つのサービスとして展開するかを考える。だが、九頭龍氏の結論は違った。「まずはとにかく、世の中に肩を並べるものがないような優れた技術を生み出すことを目指します。もちろん音楽教室事業との整合性は今後も考えていきますが、一度そこから切り離し、社会に必要とされる技術を追求しようと決めました」その技術として考えているのが、ブロックチェーン、AI、そして楽譜作成・表示のための標準ライブラリの3つだ。「楽譜もスマートフォンやタブレットで見られたら絶対に便利なはず。でも、表示のためのいいライブラリがありません」既存のライブラリを使うと、楽譜が改行されるときに音楽の流れが配慮されず、おかしなところで改行されてしまうなど問題が多い。「音楽的に整合性のある表示ができるライブラリを公開したら、音楽業界にかなり貢献できるはずです」まさに社会に必要とされる技術である。
モンゴル拠点には数学・物理オリンピックの
メダリスト級エンジニアがいる
世にない技術を生み出すのは、大変な苦労がともなうのではと思うが、九頭龍氏は「エンジニアは変な生き物なので、バグがたくさんあって動かないような状況だと逆に気合が入るので、苦労にならないんですよ」と笑う。逆に大変なのは“人”。「これまでスタートアップの経営にかかわってきた経験から、人材は最大のリスクだと感じています。採用には気をつけないといけないし、焦ってもいいことはないですね」短期集中の業務で人手が足りなければ、フリーランサーを活用して進める方法もある。そのために焦って採用するのではなく、長期的な計画に基づいた社員は慎重に採用していくと話す。「それでもすでに何人もいいエンジニアを採用できているので、順調に進んでいます」
人材も決して日本にはこだわらない。その代表が、EYSがモンゴルに持つ開発拠点だろう。モンゴルでITというと意外な組み合わせに思える。「確かにモンゴルの主要産業は鉄鋼とカシミヤですが、国としてIT分野に注力すべくエリート教育を進めています。実際、国際数学オリンピックの金メダリストにもモンゴル人がたくさんいます」と九頭龍氏は語る。実はモンゴルオフィスのマネージャーもモンゴル国内で開催される物理オリンピックの金メダリストなのだというから驚くしかない。
「AIは多額の投資が必須」は間違いだと証明できた
オフショアというとこれまでは海外の安い人材につまらない仕事を任せるというニュアンスで語られてきたが、それはもう違う。「世の中にはいろいろな国があって、そこで努力している人がたくさんいる。世界的にみたときに日本はどうかというと決して技術的にトップレベルにはいません」それを踏まえたうえで、海外のエンジニアとチームを組むことにはコスト的にも大きな意義がある。
「ブロックチェーンやAIというと数百億の投資が必要と言われています。特にAIは大きなトレンドになっていることもあり、お金と人員をつぎ込むのが当たり前という風潮がありますが、そのやり方は非効率的ですよ」今、多くのプロジェクトで取り組んでいるAIは要するに自動化であり、どう自動化するのかは人間が試行錯誤するしかない。そして、この試行錯誤をとにかく人員を集めて人海戦術でやろうとするからお金がかかるのだ。「もちろんお金をかけて効果が得られ、それだけの投資する方がいる以上それでもいいのかもしれませんが、最近のAIやブロックチェーンというだけで数百億円レベルでも簡単に調達できてしまう風潮は疑問です」確かにICO(※)で多額の資金を集めながら、実現できずに消滅してしまうプロジェクトも後を絶たない。「優秀な人材を集めれば同じ試行錯誤でも圧倒的に効率的にできます。個人的には資金的にもっとコンパクトに成果を出せると考えていたのを、EYSで証明できました」実際にAI・ブロックチェーン開発の大半を占める人件費・設備投資をあわせても費用はかなりおさえられており、ニュース記事で取り上げられるようなAI関連プロジェクトの資金調達と比べて一桁どころか二桁違うレベルだというから驚くしかない。本当に優秀なエンジニアが集まっているからこそ、効率的な開発が可能になる。まさにEYSは世界を味方につけ、先へと進んでいくのだ。
※ Initial Coin Offering。暗号通貨やブロックチェーン上のトークンを発行することで資金調達をおこなう方法
論文、不動産………異業種への技術提供も視野に
Inspiart事業はこれからどう進んでいくのか、そんな問いに九頭龍氏は「どんどん外部を巻き込んでいきたい」と話す。EYSは音楽教室のイメージが強く、技術開発を進めるにはそれだけでは行き詰まってしまう。そこで、Inspiart事業で開発したブロックチェーンによる著作権保護の仕組みも、アーティストやレーベル、著作権管理団体など音楽領域で存在感がある人を巻きこむことで、より一層EYSに注目を集められる、というワケだ。また、「ブロックチェーンによる著作権保護の技術は音楽に限りません。最近では、論文の盗用などが問題になっていますが、著作権を管理する仕組みがないので、ブロックチェーンでできないかという話を聞きました」さらに、ブロックチェーンでは著作権を保護するだけでなく、権利を“シェア”する仕組みも実現できる。「Inspiartでは『楽曲の証券化』を目指していますが、これは不動産の共同保有にも展開できるのではと考えています」ここも今、投機対象として注目を集めているが、現状の仕組みでは契約までに何ヶ月もかかってしまう。「ブロックチェーンならば不動産の共同保有に関する契約をスピーディにし、技術的な課題を解決できます。こういった分野の企業にパートナーとして技術提供するのもアリですよね」ブロックチェーンだけでなく、機械学習の分野でも同様に存在感を出していきたい、と九頭龍氏は話す。「社長の吉岡はアイデアが次々に出てくるので、話していてすごく面白い。この会社、なんの会社だっけ?って思うこともしょっちゅうですよ」音楽という原点を持ちながら、それに縛られない未来を描いている。Inspiart事業はこれからも加速を続けていく。
“Inspiart”プロジェクトを推進する
プロジェクトメンバーのご紹介